わたしが気になる人に、ケン・ウィルバー氏がいます。
一般的には「インテグラル理論」という単語のほうが有名かもしれません。そうした言葉が SNS のうえを踊りながら滑っていくのを眺めているときは
わたしには関係のない、縁遠い雰囲気だな〜〜
と思って数年が経過。そもそも、当時はケン・ウィルバーという名前も、ティール組織がインテグラル理論をベースに生まれた取り組みであることも知りませんでした。
ところが、別の疑問から彼の著作を読んだら……転げ落ちたというか、今までにない感覚に貫かれました。
今回の記事では記述は避けますが、長らく周囲を観察しながら思っていた気持ち悪さや、一見とても美しく「愛がある」という人達の後ろ暗さに対しての解が得られ、スルスルと言語化されて開いていくような感覚があったのです。
「こういうものを求めていたの! ここが解せなかったんだ」とか「そうなの、それを言葉にしたくて、でも出来なかったのーー!」みたいな、中学生の頃かのような勢いある心、オンパレード。
何か専門職についている、哲学に興味がある人、そういうニッチな場所では大人気かつ鉄板ネタな人なのかな、と思うのですが。もっと一般的に広く手に取られていいのではないかと思っています。
ただ、ちょっと題材であるとか、語り口が堅めなので……「いやー、むり✋」という人もまた、多いかなとも正直には思うのですけれど、でも“万物の理論”なんて明らかに無茶と分かってトライする人です、そんな彼の脳内や思考に触れるのは、なかなか素晴らしい機会だと思いませんか?
難しそうだなと思われたとしたら、まず「ケン・ウィルバー」という面白くて、ユニークで、天才で、出来過ぎエピソードの、だけど抱えきれない課題へと(ときに傲慢さや不安なエゴに対峙して)向き合ってこられた男性を知ることで、今まで興味の向かわなかった世界が開くんじゃないかな。
きっと今あなたに必要なところだけでも「ぱくっ」と齧ることが出来てしまうのじゃないかなーと思いました。
\そんなガイド記事です!/
せっかくわたしが書くので、わたしらしく脱線しまくり、占星術も引っ張りこんであーだこーだまとめていきたいと思います。よろしくお願いします!
まるで漫画のキャラクターみたいな、出来過ぎケン・ウィルバーさん
彼について分かりやすい説明をするとしたら。
⭐若干23歳にして、デビュー作『意識のスペクトル』がベストセラーという華々しいスタートをきる。(とはいっても、書き上げたのは1973年ですが出版社探しに苦労し、ようやく77年クエスト・ブックス社から刊行となったそうです)
⭐そしてケン・ウィルバーの“東洋哲学と現代心理学の統合”というめちゃハードモードを遂げた功績を称えて各界からは
意識研究のアインシュタイン
彼はフロイトとブッダを結合させた人物
21世紀はまさに3つの選択肢がある。アリストテレス、ニーチェ、さもなければウィルバーだ
こんな呼び声まであるそうで、まぁ派手というか、ものすごい表現ですよね。さすがアメリーカ🇺🇸
⭐ちなみに、もう少し手の届きそうな世界でいえば、あの映画『マトリックス』監督のウォシャウスキー姉妹(ちなみに『攻殻機動隊』『村上春樹作品』も大好きなのだそう)も、彼に大きな影響を受けたと述べていて
自分たち監督が解説することで読解を固めてしまうことを懸念した姉妹は、自分たちの代わりに思想家・哲学者である彼ら専門家からの“マトリックス解説コメンタリー”を求めたりと、交友関係にあるそうです。
マトリックス三部作の脚本家と監督であるラナとリリー・ウォシャウスキー (以前はラリーとアンディ) は、自分たちの発言が教義になってしまうことを恐れ、初日から映画の解釈を明かすことをためらってきました。しかし、これはワーナー・ブラザーズにとって、アルティメット・マトリックス・コレクション DVD ボックスセットを制作する際に問題となりました。監督がコメントを拒否しているのに、ボックスセットに必須の監督の解説をどうやって入れるのでしょうか?
ウォシャウスキー兄弟は、ケン・ウィルバーとコーネル・ウェストに、3 作品すべての監督解説を依頼しました。以下の会話は、ケンがロサンゼルスに飛んでラナとコーネルに会い、解説を録音する直前に録音されました。ケンとコーネルは 15 時間分の解説を録音しましたが、3 作品に合うように 6 時間に編集されました (すべての解説はこのページでご覧いただけます)。
⭐他にも有名どころでは、ビル・クリントン元大統領、ディーパック・チョプラほか、多くの著名人が彼を認めているといいます。
あまりにもブームになったもの、大衆に大ウケしているものに対する天邪鬼っぽさというか、やや疑いを持ちやすい自分としては、ここまで来てしまうと「はぁ。そうですか、すごいんですのね」という感じで、逆に読みたくなくなります……。
が、オーソドックスに眺めると、こうした情報は彼の思想や情報に対して、正当さや信頼性が増すのではないかと思い、紹介しました。
ケン・ウィルバー氏の略歴
ケン・ウィルバー
1949年1月31日生まれ。米空軍に勤める父の都合で、アメリカ中を転居して回る子ども時代を過ごす。高校の4年間で4つの学校に移るが、それでも生徒会長に2度選ばれたという。
社交的な性格に加え、スポーツにも秀でていて、フットボールのキャプテン、総代スピーチを任されるなど非常に優秀な生徒だった。彼は私立名門で全米最難関校のひとつ、デューク大学の医学部に進学する。ビールを飲んで、女の子と遊ぶのを楽しむような、モテモテ陽キャだったそうです
しかし老子『道徳経』に出会ったことで、彼のアイデンティティを激しく揺さぶられ、精神的危機へと陥ってしまう。結局、科学を信奉する自分が崩され退学。別の大学へ化学・生物化学から再入学、また同時に東洋の哲学書や禅、瞑想、仏教などへの探究へとのめり込んでいくことになる。
ウィルバーは、トランスパーソナルな見方を重んじることから、ニューエイジに分類されるが、近年では哲学者であるとも評価されている。
1990年代中期以降、トランスパーソナルから決別し、より包括的な理論としてインテグラル思想を提唱しているが、その原理は「すべては正しいが、部分的である」というものである。
ウィルバーは自身の思想を、ウィルバーI、ウィルバーⅡ、ウィルバーⅢ、ウィルバーⅣという4つの時期に分けて説明している。
―― Wikipedia、ウィルバー思想の考察 Webサイトを参考に記述
いろいろかっ飛ばしましたが、最初に彼がこうした思想へとはまり込んだ契機に着目したいと思います。だって、
老子の文章を読んで動揺し退学、という学生時代エピソード……すごくないですか。挫折までかっこいいというか。かっこつけて書いているところもあるんだろうか、みたいな
御本人としては、こんなに順風満帆でキャリア形成に向けて、さあこれからだ! というときに、激しい苦痛だったことだろう、と想像するのですが。相当な苦しみだったと語られている様子です。
ウィルバーを東西のさまざまな思想の総合へと駆り立てたのは、自らの人生の欠如感であり、その欠如感を埋め合わせようとするかのような知的貪欲さでした。
「自己救済のために、なにもかも読まずにはいられなかった」とウィルバー本人が語っています。
大学時代に彼を襲ったアイデンティティ・クライシスが彼を突き動かした
それほど彼を奈落へと落とした(?)文章、気になりますよね? ということで、こちらです。
原文
道可道,非常道。名可名,非常名。
無名天地之始;有名萬物之母。
はい、分からない。少し編集されると、こういった内容のことだそう。
書き下し文
道(みち)の道とすべきは、常(つね)の道に非(あら)ず。
名(な)の名とすべきは、常の名に非ず。名無きは天地(てんち)の始め、名有るは万物(ばんぶつ)の母。日本語訳 例
道で道であると定義できる道は、不変の道ではない。名称の名づけられる名称は、不変の名称ではない。名称が無いものが天地の始めで、名称があるものが万物の母である。(『論語』全文・現代語訳)英語訳 例
Nature can never be completely described, for such a description of nature would have to duplicate Nature. No name can fully express what it represents.(BAHM, Archie J.英訳)
この文章から大きく方向性を変えられてしまうほどに、インパクトを感じ取り、受け止められる瑞々しい感受性って一体……と思うのですが。
もちろん個人的な理由だけではなく、当時のアメリカが直面していた時代背景や精神構造もあるのでしょうけど……
とはいえ、その挫折で砕かれたままで終わらせることなく、誰も遂げられていなかったアプローチから、東西(あるいは哲学と宗教と科学と……万物!)の統合へと進まれた訳で、占星術的に言えば見事にハードアスペクトを創造へと転換させた人なのだと思います。
ということで、せっかくなのでチャートを見てみます。
余談、ケン・ウィルバー氏のホロスコープを見てみると
▼Astro Seek による、ケン・ウィルバー氏のチャートです。
パッと目についたのは、<5ハウスにある 太陽、 水星、 火星>で強調された、さすがというか納得の思いの水瓶座と、そこへ常に緊張を与えている<11ハウス 獅子座 冥王星>(このサイトだと記号が違いますが、円を受け止めている十字みたいなやつです)によって形成されているオポジションでしょうか。
あるいは<アセンダント 天秤座を今しがた通り過ぎた、 海王星>そして<11ハウスにいる 乙女座の 土星>とスクエア関係にある<3ハウスのカスプに乗っかる 射手座のキロン>。
これらの天体たちはまた、先の水瓶座軍団とも関係性を持っています(古典では水瓶座のルーラーは土星ですし、土星のある乙女座ルーラーは水星です)。
そんな訳で、かくも多様なエネルギー供給源から、際限なく 水星が駆り立てられていきそうな気配が濃厚に漂います。自分なんかは彼の著作から入っているから、つい意識して見てしまう向きもあるかもですが。
しかも登場人物たちが冥王星に海王星、土星にキロン。それを一手に引き受ける水星・太陽・火星たち。なんとなく、楽しく♪ 心地よく♪ ではなさそう、というか。常に虐げられる弱者(あるいは自身の傷)を見ながら活動や探求に向かい、誤りを正し改善していきたい、そこへ霊感のようなインスピレーション、はたまた脅迫的な大衆が迫ってくるような。
出生時間が正しければ、の枕詞がどうしても必要となりますが、彼の月がこの位置にあるなら、そこへ向かってインコンジャンクトで冥王星と海王星がかかるので、これは月ー冥王星ー海王星のヨッドになります。月が追い詰められているというか、「おうおう、言う通りにせえよ」「成長しいやー」みたいな感じというか。
そのうえ、冥王星から見ると、月だけではなく木星も150度の位置にありますから、今度は冥王星ー月ー木星のヨッドもあるという。
もっとも弱く柔らかい月に、もっとも変容を強いてきて外側からの圧力を持ち込んでくる冥王星。それらに対して強く働きかける海王星と木星。なんというか、難題をドシドシと拡げられるだけ広げる(木星、海王星)一方で押し付けてこられるというか、なるほどというか。
この<2つのヨッド>という配置も、彼の非凡な才能(に花開かせなくてはならなかった、おそらく強い衝動や環境)を象徴しているのかもしれないと感じました。とはいえ、冥王星と海王星の60度は世代天体なので、あるタイミングでヨッドのアスペクトを持つ人は多く生まれているかと思いますが、どう活かすか、どう自分を使いこなすかの生きた実例ですね。有名どころでは、イチロー選手もヨッドをお持ちな方だそうです。
彼が瞑想という能動的な姿勢で海王星を使わず、トランスパーソナルといった月ー冥王星的な活動へと献身的に取り組んでいなかったら、それらのエネルギーや欲求や衝動はただ彼を切り刻むような脅かしてくる出来事として顕れていたのかも……なんて勝手なことを言える身分ではありませんが、考えさせられるチャートでした。
そして、さらに想像を絶する痛ましい出来事が彼らを襲います。
再びのクライシス――愛する伴侶を襲う病、そして別れ、アルコール依存
運命的に惹かれ合い、愛する女性と結婚! しかしその10日後に、なんと彼女にガンの宣告がくだります。
3年間つきっきりで、手を尽くして互いに看病に向かうものの、彼女は亡くなってしまいます。彼は、アルコール依存に走ったこともあったと告白しています。
命の不安と、痛みや苦しみと向かわなくてはならず、何度も転移が見つかり病を併発する彼女を支えたいと思っている自分と、彼女に苛立ち手を上げてしまう自分。
そのうえ、療養のためにと2人で向かった先で、なんと<汚染物質流出のためにひきおこされた疾病(RNase)に罹患>してしまったと Wikipedia には書かれています。しかも、ウィルバーは今日もなお、この慢性疾患との闘病生活を続けているという注釈付きで。この文章を読み進めながら、なんという仕打ちをするのだと思いました。
RNase という病気を、わたしは初めて聴きました。
ケン・ウィルバーが親しい友人に自分の病気について説明した手紙を、許可を受けて公開しているという記事があったので、引用します。
私の病気は RNase 酵素欠損症(REDDという頭字語が大好きです)と呼ばれています。この病気は、多発性硬化症、筋痛性脳脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症、炎症性関節リウマチ、湾岸戦争症候群、線維筋痛症など、多くの病気に全面的または部分的に関与していると考えられています。
(中略)基本的な問題自体は単純です。
RNaseは、ウイルスや細菌の攻撃を受けたときに人体によって生成される酵素です。名前が示すように、RNase はメッセンジャー RNA を見つけるとそれを変性させます。侵入したウイルスや細菌と接触すると、その RNA を破壊して侵入者を殺します。これは、数日または数週間かかることもあるT 細胞、B 細胞などの遅い生成とは異なり、非常に即効性のある防御メカニズムであり、体の最初の防御線の 1 つです。
REDD では、RNase を生成するメカニズムがさまざまな原因で損傷を受けます(中略)病状が進行するにつれて、ミトコンドリアがどんどん損傷し、破壊されます。重症の場合、患者は一生寝たきりになります。
(中略)急速にダメージを受けるもう一つのシステムは、細胞内防御(すなわち、細胞内で攻撃するウイルスやマイコプラズマなどの原始的細菌に対する防御)を担うTh1 免疫システムです。
本来は外敵から攻撃を受けたとき、人体で生み出される酵素(この酵素が、コロナワクチンで話題になったメッセンジャー RNA を変性できる働きを持つのですね)に異変が起き、対処ができなくなってしまう。
そのうえ、体内のエネルギー源を生み出しているミトコンドリアも壊されてしまうしで、どんどん動けなくなる。さらに外敵から身を守る免疫システムまで破壊されてしまう、というのが主の困りごとなのかなと。壮絶ですね。
なんだけど、
病気の第一段階は約 5 年間続き、皮肉なことに、タンパク質を合成する身体能力がひどく損傷し、RNase も生成できなくなると、病気は終わります。その後、約 10 年間続く第二段階に入ります。
この段階では、病気自体に関しては比較的穏やかですが、身体活動が著しく低下し、いわゆる「機能バブル」の中で生活し、1 日に数時間しか歩き回れないことがよくあります。
幸いなことに、私は身体を必要としないライフスタイルを培っていたので (:-)、中期の 10 年間 (およそ 1990 年代全体) はかなり順調でした。
このジョークめいた表現。(:-) 顔文字つき。笑
基本的な症状は「低酸素症」、つまり細胞内の酸素不足(ミトコンドリアの損傷による)なので、ほとんどの時間、窒息しているように感じ、24時間(文字通り)寝たきりになることも少なくありません。また、私にとって幸運なことに、これは大規模な瞑想を意味します。また、憂鬱、悲しみ、痛みも意味しますが、身体の痛みというよりは、身体ができないことで感じる痛みです。
奇妙なことに、もちろん、私の精神は本を書き続けており、この最後の非常に厳しい期間(最後の半年)に、私は約 800 ページの本当に良い本を書き上げました。ベッドで書くことが多かったのですが、それは問題ではありませんでした。
いやはや、すごいですね。でもただの聖人とか、感情抑制している訳ではなく、後半では「勝手に善意めいた投影をぶつけてこないでくれ」といった内容もあって、感じ入るものがありました。
ちょっと一分間、楽しい愚痴を言いましょう。
私は、この病気を自分に与えることで自分に教えようとしている「教訓」について、多くの時間を費やして悩んでいるだろうか? くたばれ。質問に答えろ。
トレヤと私は、5年間、彼女がなぜガンになったのかを語る人々の話を聞いていた。
彼らは皆、彼女がこの病気にかかったのは、精神的に何を間違えたからなのかを語っていた。
問題は、彼らの誰もが互いに本当に同意していなかったこと(筆者注:自動翻訳なので文意が不思議になっていますが、おそらく彼らが言ってくる「トレヤの持つ、ガンを引き起こした原因」がバラバラで一致していなかったということだと思います)、そして
共通していたのは、トレヤを本当に動かしているものが自分はわかっているという特定の人物の傲慢な思い込み、またはトレヤに投影され、彼女のガンの原因として読み返された深い恐怖だけだったことだ。
もちろん、すべての病気には、精神的、感情的な要因がある。
私の要因が何なのか知りたいなら、私に聞いてくれ、教えないでくれ。私があなたの意見を知りたいなら、私は聞くと約束する。そうでなければ、投影は自分の胸に留めておいてくれ。なぜなら、私にはすでに、怯えて混乱している嫌な奴が一人いるからだ。つまり、私だ。そして、実際、一人いれば十分だ。
特に私の状態では。(:-)
この友人へ宛てた手紙より、昔の話になると思いますが、
そうした闘病の年月を経た、妻との足跡を著作『グレース&グリット』に残していて(生前、彼女の頼みでもあったそうです)、もちろん、彼は望んだというよりも、そうならざるを得なかったのだろうけれど、タフな人だと感じました。
愛する人との幸せの絶頂のタイミングで死を宣告され、どれほど打ちのめされたことかと思いますし、奇跡的なガンからの生還や復活といった勝利のシナリオがやってこなかったことも、
そしてあれほど心理やセラピーに精通した自分がお酒に逃げたことも、あらゆる事実や限界を認めて、絶賛されていた世界に向けて自分の弱さを見なくてはならない時期は、成功を手にした彼のエゴにとってどれほど不愉快だっただろうと思います。
▼わたしは、『グレース&グリット』とても読めていないのですが、こちらの記事に丁寧にまとめられていました。ぜひ…😭
そんな体験を魂ごと、体ごと、偽りなく通り抜けてきた彼だからこそ、前人未到の巨大かつシンプルな地図作りを成し遂げられたんだろうなと。大きく、広く、深い眼差しを持って“目に見えない意識の世界”をタイムスリップしながら、これほど自由に飛び回られているのじゃないかなーと想像しました。
ということで、ネット上で見つけられる情報群に過ぎないのですが、こうした半生を送られた人なのだということも含め、そして著作を読むにつけ、彼の思想や目線に対して自分は好感触を覚えている次第です💃
実際のケン・ウィルバー氏、その様子など
YouTube に上げられている、御本人の映像としては、瞑想によって脳波をコントロールしている(止めている)様子があります。
このビデオに添えてある概要が――
You already knew that Ken has no heart, now we find out that he has no brain, either!
あなたは、ケンに“心”がないことを既にご存知ですね。いま我々は、彼に“脳”がないことも発見しました!
なんともユーモラスというか、知的ジョークというか?笑 さすがに彼が喋っているところをリスニングできるほどの英語力が自分にはないのですが😭、映っている機器の様子から雰囲気は掴めると思います。
喋ってるところ。ウィッグをかぶり出したのはなぜですか? というタイトル。
元々、25歳から自分で髪を剃っていたそうなーー。長年剃り続けてきたから、少しでも髪が伸びると違和感があるし、ウィッグを被るほうが気になってしまうんだって。そうだよなあ。
こういう常に変えてみよう、新しく在ろうとする精神性は、アセンダント・MCともに活動サイン(天秤座と蟹座)であることや、あるいはまた水瓶座が強く、そこへ獅子座の冥王星がかかっているところにも見えるかなぁと思いました。見られている自分を強く意識していて、でも同じに留まりたくない。常に破壊して変えていきたい感じと言いますか。自分はそういう人や精神性に惹かれるものがあります。
思想、意識、こころ、目に見えない世界を航海しなくてはならない現代のガイドとして
今、日本ではスピリチュアリズムがお金稼ぎのツールとして、我欲を満たすオマジナイとして(そこに規範や誠実さや根拠はなくてもいいじゃない、という無責任な解釈をいくらでも垂れ流せる逃げ道として)用いられていると感じるのですが、
どこかでそうではない、もっと深淵や奥行きのある、そして時間を超越するような「なにか」があったのではないか、あるのではないかと追い求めている希少な(?)方々にとって、ケン・ウィルバー氏の哲学はひとつの足がかりになる思想ではないかと思っています。
「総合的」という言葉は、統合すること、合わせること、結合すること、つなぐこと、包むことを意味している。
画一性という意味ではなく、人間性におけるすばらしい差異性や色彩、ジグザグな変化をアイロンで平らにのしてしまうという意味でもなく、多様性の中の統一性という意味で、私たちのすばらしい差異性とともに共有性を分かち合うことである。
うーん、好きだなー!! そう関わり合えたらいいなあ。
『万物の理論』日本語訳を努められた岡野守也さん(サングラハ教育・心理研究所代表)は、本書をこのように始められています。
ケン・ウィルバーは、現代アメリカの、というよりは現代の世界の、もっともすぐれた思想家の一人であり、二十一世紀という海図なき嵐の海で漂流・遭難することなく航海し続けるための、今望みうる最善の羅針盤、最高の水先案内人であると思う。
もし読者が、環境の破壊、世界の偏った貧困、民族・宗教紛争、テクノロジーの暴走、グローバリゼーションのマイナス面などなど、列挙すれば果てしない現代の危機に直面して、「これはなぜなのか」「どうすればいいのか」「はたして人類は生き延びられるのか」といった、深い不安をともなった疑問を抱いておられるとすれば、ぜひ本書を繰り返し熟読されるようお勧めしたい。
具体的なテーマ、目に見える問題のカタチは違っても、なによりもケン・ウィルバー氏自身が激しく引き裂かれ懊悩し、その末に気づき整理されて獲得したきた思想だからこそ、上記のような複雑で深刻な悩みを抱えるひとびとに対して、ある種の答えや癒しを与えてくれるのだと思いました。
余談、ケン・ウィルバーを日本に紹介した、吉福伸逸氏について
日本では「インテグラル理論」で盛り上がる前にも、ケン・ウィルバーがブームになったタイミングがあるそうです。
例えばトランスパーソナル心理学やニューサイエンス(注:細かく分解し部品を知ろうとする科学に対して、相互関係や環境対応に着目する「ホロン」といった概念も生み出したもののよう?)の旗手、代表的存在として扱われ輸入されていたそう。
1986年に出版された(より古い)ケン・ウィルバーの書籍『無境界』も自分は所持しているのですが、こちらの本を訳した吉福伸逸氏が日本へケン・ウィルバーも持ち込み、おおいに勧めておられたようです。
吉福さんはニューエイジ、ニューサイエンス、スピリチュアル、トランスパーソナル、ホリステック医療と呼ばれる潮流の日本における中心人物だった人です。その潮流に関連する本を200冊近く翻訳・監修しています。
(中略)サイケデリック革命が起き、ヒッピーが社会現象となっていた66年にジャズミュージシャンとして吉福さんは渡米しました。
(中略)スティーブ・ジョブズの愛読書として知られていたラムダスの「ビー・ヒア・ナウ(Be Here Now)」を79年に日本で出版したのも吉福さんです。「ビー・ヒア・ナウ」は70年代の精神世界のバイブルです。
(中略)LSDは日本で1970年に禁止になり日本にはその表面的なファッションだけが輸入され真のサイケデリック・ムーブメントは起きなかったといいます。そのためトランスパーソナル心理学を導入する土台の部分がすっぽり抜け落ちていたといっていました。
知識や理論をいくら詰め込んでも日常の意識状態とは異なるトランスパーソナルな意識を理解することはできません。サイケデリックス、瞑想やボディワーク、シャーマニズム、トランスパーソナル・サイコセラピーなどを通して直接経験しなければトランスパーソナルな状態は理解できないのです。
(中略)次第にトランスパーソナル心理学が日本でも知られるようになってきました
しかし89年、突然、吉福さんは妻子を連れて日本を去ってハワイへ引っ越しました
日本でのセラピストや心理学者、精神科医との人間関係に嫌気がさしたということです
わたしは『ビー・ヒア・ナウ』を読んでいませんが、おそらくはそうした本や思想たちによって多大な影響を受け、さまざまな変化があった人たちから(分かりやすいところではスティーブ・ジョブズも)、わたしは影響を受けているだろうと思います。
いまのわたしに影響を与えた日本の書籍には、この方がたくさん関わり養われていた水脈があったのだろうなと――🙏 そしてその1つに、ケン・ウィルバー氏があったのだなと思います。
少し話が膨らみましたが、日本でいえばそうした過剰な流行(あるいは過度な期待)が、おそらくオウム真理教などの事件によって落ち込み、またケン・ウィルバー氏に限って言えば
本書でも触れられている個人的な事情(奥さんのガン)のために、ほぼ十年、本格的な著書という意味では休筆状態であったことも重なって、やや忘れられつつあったようである。
といったときを経て、
しかし『進化の構造』とその要約版『万物の歴史』を著して現代思想の舞台に再登場してきたとき、ウィルバーはもはや先のような表現では表わしきれないほどの、きわめてスケールの大きな思想家・哲学者に変貌していた。
と、結ばれています。そんな変貌後の“ウィルバー像”を述べるなら
現代の物理学、生物学、エコロジー、システム科学、複雑性の科学、構造主義、ポスト構造主義の哲学、人類学、現代社会萼、さまざまな派の心理学、東西の神秘思想……比喩的に言えば、およそ何でも知っているのではないかと思うほどの膨大な知識量を、みごとな思想体系にまとめあげ、我々の生きている宇宙がどのような構造で進化してきたか、進化しつづけているか、壮大な見取り図を提示したのである。
……とのことで、皆さまもぜひお手元に一冊いかがでしょうか!
もともとの出版は、トランスビュー社による『万物の理論』2002年刊行ですが、現在は絶版に。
日本で一躍(わたしのような門外漢まで知るくらい)有名になったものは、日本能率協会マネジメントセンター社から2019年に出た『インテグラル理論』と認識しています。他にも書籍がありますが、おそらくはこれが一番スタンダードな本という位置づけになるのかなと思います。
ということで、次回からは内容に移っていきたいと思います!